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《テーマ3》融資先の法人成り

 個人商店を営むAさんに融資した事業資金の担保として、Aさんの父Bさん所有の土地と建物に抵当権の設定を受けていますが、今般、Aさんが商店を法人化して株式会社を設立することになり、事業資金の債務者も会社にしたいとの申し入れがありました。

1.金融機関として必要な手続

上記のような場合、どのような手続が必要ですか?

 設立する会社に、Aさんの事業資金にかかる債務を債務引受してもらうことになります。

 債務引受には、

@Aさん個人も債務者として残し、会社を連帯債務者として追加する形をとる重畳的債務引受と
AAさんについては債務者から外し、会社だけを債務者とする免責的債務引受の

 二通りがありますが、連帯債務は法律関係が複雑で、管理上煩雑となる可能性がありますので、Aの免責的債務引受を選択し、Aさんには連帯保証人になってもらう方が実務的でしょう。

2.注意すべき点

上記の債務引受の際、注意すべきことは何ですか?

 債務引受について、
@担保提供者であるBさんの同意を得ること、
A設立する会社の株主総会等の承認を得ること、
が重要です。

 第三者が担保提供(物上保証)している被担保債権について、担保提供者の同意なしに免責的債務引受がなされると、担保権は消滅します。また、担保提供者には連帯保証人にもなってもらっているケースが多いでしょうが、保証人の同意なしに免責的債務引受がなされると、保証が消滅します。

 したがって、この事例では、Bさんの同意を得ることが非常に重要です。(なお、重畳的債務引受の場合は、担保や保証が消滅するといったことはありませんが、金融機関の債務引受契約書等の様式では、重畳的債務引受の場合でも担保提供者や保証人からも署名・押印してもらう型が一般的のようです。)

 もう一つ大事なことは、会社が(代表)取締役の債務を引き受ける行為が、会社法上制限されている利益相反取引に該当するということです。このため、Aさんが設立する株式会社が取締役会設置会社の場合は取締役会の、そうでない場合は株主総会の承認を得ておかないと、後日、債務引受契約の無効が争われる危険性があります。

3.必要な登記手続

抵当権の登記に関して手続は必要ですか。

 抵当権の変更登記(債務者の変更)が必要です。

 免責的債務引受を原因として、抵当権の債務者をAさんから会社に変更する(重畳的債務引受であれば会社を連帯債務者として追加する)抵当権変更の登記が必要になります。なお、この変更登記に際しても、利益相反取引について承認決議をした株主総会議事録または取締役会議事録が必要になります。

4.担保権が抵当権ではなく根抵当権だった場合

担保権が、抵当権ではなく根抵当権だった場合も、同様と考えてよいですか?

 登記手続に関して、債務者の変更のほか、被担保債権の範囲も変更する登記が必要になります。

 まず、根抵当権の債務者をAさんから会社に変更する、若しくは(今後Aさん個人にも融資する可能性があるとすれば)根抵当権の債務者に会社を追加する必要があります。また、同時に、被担保債権の範囲に従来からの「銀行取引」等に加え)特定の債権として、「年月日債務引受(旧債務者A)にかかる債権」を追加することになります。

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