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《テーマ5》破産免責債務者の保証人の死亡

 当行は6年程前にAさんに長期資金を融資し、その際、Aさん所有の住宅とAさんの父Bさん所有の敷地に抵当権の設定を受けるとともに、Bさんには連帯保証人になってもらいました。
 その後、3年前にAさんが自己破産し、免責決定を受けたものの、連帯保証人であるBさんが約定どおりの返済を続けてくれたことから、抵当権の実行等はせずに現在に至っていますが、先般Bさんが亡くなりました。

1.抵当権実行の要否

Aさんは、現在は定職に就いて相当の収入もあるようですが、当行の貸金は免責の対象となっているので、回収の方法は抵当権の実行しかないのでしょうか?

Aさんに返済能力があるのであれば、保証債務の履行を請求することができますから、あえて抵当権を実行する必要はありません。

 破産手続は、原則として破産手続開始決定時における債務者(破産者)の 資産負債を清算する手続です。具体的には、破産手続開始決定時の債務者の総財産を換価して、同時点の債権者に公平に配当する手続で、対象となるのは原則として破産手続開始決定時に存在する破産者の財産と債務であり、破産者の総財産で弁済しきれなかった債務については免責決定により責任が免除されます。

  こうした破産手続の性質上、それ以後に債務者が取得する財産(新得財産)については債務者が自由にできる代わりに、それ以後に負担する債務は破産手続とは関わりなく免責の対象ともなりません。したがって、質問の場合、Aさんが破産手続開始決定時点で負担していた 借入金債務に関しては確かに免責決定を受けていますので、債権者としてもAさんに貸金の返済を請求することはできません。

 しかし、金銭消費貸借契約に基づく貸金債権・借入金債務と、保証契約に基づく保証債権・保証債務とは、法律上別個の債権・債務です。つまり、Aさんが借入金債務について免責を受けていても、Aさんの父Bさんが負担していた保証債務は、Bさんの死亡によって当然にその相続人であるAさんが承継することになり、そして、この相続債務は破産手続開始決定後にAさんが負担した債務ですから、破産手続とは何の関係もない債務ということになります。

 したがって、債権者としては、Aさんに貸金の返済を請求することはできないものの、Aさんが相続した保証債務については、堂々とその履行を請求できることになり、Aさんに返済能力があるのであれば、あえて抵当権を実行するまでもなく、回収することは可能です。

2.必要な登記手続

必要な登記手続はありますか?

抵当権に関する登記は必要ないと考えますが、Bさん名義の敷地については相続登記をするようAさんに求めるべきでしょう。

 抵当権は、破産法上も別除権として破産手続外での行使が認められおり、債務者が破産しても原則として影響を受けません。つまり、現在においても抵当権の債務者はAさんであり、債権者が抵当権者であることに変わりはありませんので、抵当権そのものに関しては特に登記すべきことはないでしょう。

 ただし、抵当権不動産の一つである敷地の所有者Bさんが亡くなったため、その所有権は既に相続人であるAさんに移転しています。したがって、Aさんは敷地について相続登記をしておく必要がありますし、抵当権者としても(抵当権の実行等に備えるためにも)Aさんに相続登記をするよう求めるべきでしょう。

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