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《テーマ16》連帯債務者の一人の死亡

 Aさんとその妻Bさんを連帯債務者として、住宅ローンを融資していますが、先般Bさんが亡くなりました。
 この住宅ローンにはX保証会社の保証が付されており、融資対象の住宅とその敷地にはX保証会社の抵当権が設定されています。
 なお、住宅と敷地はAさんとBさんの共有(持分各1/2)であり、また、Bさんの相続人はAさんと大学生の長男Cさん(19歳)の二人です。

1.連帯債務関係の相続

この場合、住宅ローンの債務者に関する法律関係はどのようになりますか。なお、住宅ローンの残高は2,000万円です。

Aさんは、2,000万円全額についての連帯債務と、1,000万円について自分自身との連帯債務を負担し、Cさんは1,000万円についてAさんとの連帯債務を負担する形になります。

 連帯債務とは、「数人の債務者が同一内容の給付について各自独立に全部の弁済をなすべき債務を負担し、そのうちの一人が弁済をすれば他の債務者も債務を免れる債務関係」を言います。
 つまり、連帯債務には、
 @ 債務者の数に応じた独立した債務である
 A 各債務者は全部の給付をなすべき義務を負う
 B 債務者の一人の給付があれば、全債務者の債務が消滅する
という性質があるのです。

 したがって、質問の場合も、(AさんとBさんが連帯債務者だったということは)AさんとBさんがそれぞれ独立して2,000万円の住宅ローン債務を負担していたことになります。

 このため、Bさんの死亡によって、夫であるAさんと子であるCさんは、Bさんの2,000万円の債務を法定相続分に応じ1/2ずつ相続しますが、一方で、Aさんが負担していた2,000万円の連帯債務は従前のままですから、結果的に、Aさんは、自分固有の2,000万円の連帯債務の他に、Bさんから相続した1,000万円の債務を自分自身と連帯して負担する形となります。他方Cさんは、Bさんから相続した1,000万円の債務をAさんと連帯して負担することになります。(Aさんに関しては、自分自身との連帯債務という分かりにくい法律関係が生じますが、連帯債務がそれぞれ独立した債務であるため、このような法律関係に整理されると解されます。)

2.夫による所有権持分の相続

Aさんは、Cさんに債務を負担させないためにも、自分一人が住宅・敷地のBさんの持分を相続したいと言いますが、可能でしょうか?(当行では、担保不動産の共有者には原則として連帯債務者や連帯保証人になってもらっています。)

可能ですが、原則として、特別代理人を選任してもらう必要があります。

 住宅・敷地のBさんの持分をAさん一人が相続するには、(Cさんが特別受益者として相続分を有しないといった事情がない限り)AさんとCさんが遺産分割協議を行う必要がありますが、Cさんは未成年者のため単独ではこの協議を行うことができません。

 また、通常、未成年者の法律行為については、法定代理人(親権者)である親が代理することになるのですが、質問のケースのように親権者とその子が当事者となる遺産分割協議は、親権者と子の利害が対立することから、利益相反行為とされ、親権者の代理権が否定されています。

 このため、AさんとCさんが有効に遺産分割協議をするには、家庭裁判所にCさんの特別代理人を選任してもらい、その特別代理人とAさんが遺産分割協議を行う必要があります。もっとも、Cさんは既に19歳とのことですから、近々成年に達するとすれば、それを待って遺産分割協議をするのが現実的かも知れません。

3.子を債務者から外す方法

Aさんから「住宅・敷地のBさんの持分を自分が単独で相続し、また、Bさんの死亡保険金で住宅ローンの残高の半分を返済するので、Cさんを債務者から外して欲しい」と申し入れがありましたが。<br>
これに応じるとすれば、どのような手続が必要ですか?

ローン債権と保証会社の求償債権それぞれについて債務引受の手続が必要になります。

 Q1で述べたように、連帯債務は各債務者の独立した債務であり、かつ各債務者は債務全額を弁済する義務を負いますから、Bさんの死亡保険金でローン残高の半分が返済されたとしても、Bさんが負担していた連帯債務が消滅するわけではありません。

 つまり、ローン残高の半分が弁済された後は、Aさんは1,000万円全額についての連帯債務と、500万円について自分自身との連帯債務を負担し、Cさんは500万円についてAさんとの連帯債務を負担することになるのです。したがって、Cさんを債務者から外すためには、AさんにCさんが負担する住宅ローンの連帯債務(500万円)を免責的に債務引受してもらわなければなりません。

 また、X保証会社の抵当権の被担保債権は、X保証会社のAさんとCさんに対する(将来の)求償権ですから、この求償債務についても住宅ローン債務と同様に免責的債務引受の手続が必要です。(住宅ローンが連帯債務だとすれば、抵当権の被担保債権たる求償債務も連帯債務となっている筈です。)

4.必要な登記手続

一連の手続に伴い、どのような登記が必要になりますか。

@ Bさんの持分について相続による移転登記
A 相続による債務者の変更登記
B 債務引受による債務者の変更登記

が必要になります。

@ まず、担保不動産の所有権について、Bさんの持分全部を「相続」を原因として、Aさんに移転する持分移転登記が必要です。

A 次に、抵当権の「連帯債務者B」を「連帯債務者Bの相続」を原因として、「連帯債務者A・C」に変える抵当権の変更登記が必要になります。

B 最後にAで変更した「連帯債務者A・C」を「連帯務者Cの免責的債務引受」を原因として、「連帯債務者A・A」に変える抵当権の変更登記が必要になります。

 この結果、X保証会社の抵当権の債務者は「連帯債務者A」と「連帯債務者A・A」となり、登記上も、同一人物であるAが二重(三重)に連帯債務者として表示されることになります。同一人物であるにもかかわらず、連帯債務者として二重(三重)に表示されるのは一見奇妙に感じられますが、連帯債務の法律関係を極力正確に登記に反映させるとすれば、こうした表示方法にならざるを得ないものと思われます。

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