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《テーマ11》破産予定者の保証人による代位弁済

 自営業を営むAさんの弁護士から、近々Aさんが自己破産を申立てる旨の通知がありました。
 Aさんに対する融資は長期資金1件で、その担保としてAさん所有の不動産に根抵当権の設定を受けています。
 また、Aさんの叔父Bさんが連帯保証人になっていることから、Bさんに相談したところ、Bさんからは保証人として返済する意思があるとの回答をもらいました。

1.保証人に対する連絡の可否

弁護士等からこうした通知があった場合でも、保証人と折衝したり、保証人に代弁を求めたりしても差し支えありませんか?

自己破産の方針が確定しているのであれば、保証人との折衝・代弁請求等は差し支えありません。破産手続は、破産者(債務者)の資産・負債を清算する手続であり、第三者たる保証人とは基本的に無関係な手続ですから、破産申立がなされるからといって、保証人との折衝等が制限されることはありません。

 また、後日Aさんが免責を受けたとしても、破産法には「免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人に対して有するに影響を及ぼさない」旨の規定があります。これは、免責された債務の法的性質の解釈(自然債務説・債務消滅説)にもよりますが、いずれ「保証債務の主債務に対する付従性」の例外規定と解されますので、破産にかかる手続が、破産申立・破産手続開始決定・免責許可決定等のどの段階にあるかにかかわらず、保証人との折衝等は差し支えないと考えてよいでしょう。

 なお、弁護士等からの通知が、破産方針決定の通知ではなく、債務整理等の受任通知の場合は、(通常、保証人への連絡・取立て等も中止すべき旨が記載されているでしょうから)当面は保証人との折衝等も控えるべきと考えます。

2.代弁における留意点

Bさんに代弁してもらうにあたり、留意すべきことはありますか?

 Aさんの破産手続開始決定前にBさんから代弁を受ける場合は、事前に根抵当権の元本確定手続をとるべきでしょう。

 保証人が債務者に代わって弁済(保証債務を弁済)した場合は、債務者に対する求償権を取得すると同時に、当然に債権者に代位することになりますが、これを代位弁済(代弁)といいます。

 つまり、代弁がなされると、保証人が債権者に代わってその地位に就き、債権者の有していた貸金債権等が保証人に移転するということですが、こうした債権に抵当権などの担保権が付されている場合は、その随伴性によって担保権も一緒に保証人へ移転します。このため、(普通)抵当権付の貸金について保証人が代弁した場合は、その後債務者が破産しても、保証人が取得した債権は抵当権(別除権)によって保全され、優先的な回収が期待できるのです。

 しかし、元本確定前の根抵当権の場合は、(普通)抵当権と異なり被担保債権に対する随伴性を有しません。このため、代弁がなされても根抵当権は保証人に移転しないのです。

 したがって、質問の場合も、Bさんは(根抵当権の確定前に)代弁しても根抵当権を取得できないことになり、その後Aさんが破産した場合、Bさんは僅かな破産配当に甘んじなければなりません。一方、根抵当権は、債務者や設定者が破産手続開始決定を受けると元本が確定しますが、質問の根抵当権はBさんが代弁した時点で被担保債権が無くなりますから(被担保債権はBさんに移転しますから)、後日Aさんが破産手続開始決定を受けると元本が0円で確定することになり、結果的に消滅すると解されます。

 しかし、これではせっかくの根抵当権が無駄になるばかりでなく、Bさんの誠意に報いることにもなりませんし、後日Bさんからクレーム等がついた場合は金融機関としての責任問題にもなりかねません。したがって、Aさんが破産手続開始決定を受ける前にBさんに代弁してもらう場合は、事前に根抵当権の元本確定手続をとることが必要不可欠と考えてください。

3.元本確定の手続

元本確定手続は、具体的にはどうすればよいでしょうか?

Aさんに「根抵当権元本確定請求書」を送付することになります。
 元本の確定期日を定めていない根抵当権については、根抵当権者がいつでも根抵当権設定者に対して元本の確定を請求することができ、この場合、確定請求が根抵当権設定者に到達したときに、元本確定の効力が生じます。金融機関の根抵当権は通常確定期日を定めていませんので、質問の場合も、元本確定の手続は、内容証明・配達証明郵便でAさんに元本確定請求書を送付することで足ります。

4.必要な登記手続

どのような登記手続が必要ですか?

根抵当権の元本確定登記と根抵当権移転登記が必要です。
 まず、元本確定請求に基づいて根抵当権の元本確定登記を行います。そのうえで、Bさんから代弁を受け、代位弁済を原因としてBさんへの根抵当権移転登記をすることになります。

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