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《テーマ17》連帯債務者の離婚

 Aさんとその妻Bさんを連帯債務者として、住宅ローンを融資していますが、先般Bさんから、「Aさんと離婚し、住宅と敷地のAさんの持分を自分が貰うかわりに、住宅ローンも自分一人で返済することになったので、手続して欲しい」との申し入れがありました。
 なお、住宅と敷地はAさんとBさんの共有(持分各1/2)であり、住宅ローンの担保としてX保証会社の抵当権が設定されています。

1.不動産所有権について主張できること

融資対象の不動産がBさんの単独所有となることについて、融資機関として異議を述べることはできますか?

質問のケースでは、異議を述べることはできないと考えるべきでしょう。

 離婚するのも、離婚に伴って夫婦の財産をどう分けるかも、身分行為・身分行為に伴う行為であり、基本的に当事者の自由ですから、債権者たる金融機関も原則として異議をとなえるわけにはいきません。

 もっとも、近時の判例では、極端に不相応な財産分与については債権者取消権(詐害行為取消権)の対象となる旨が判示されています。このため、例えば、無担保融資の債務者が離婚に伴う財産分与の形で、全財産を離婚する妻に贈与したといったケースであれば、債権者が異議を述べることも可能でしょう。

 しかし、質問の場合はこうしたケースとは異なります。また、抵当権の設定契約書には通常「抵当権設定者は、あらかじめ抵当権者の書面による承諾がなければ、抵当物件を譲渡しない」旨の条項が盛り込まれていますから、抵当権者のX保証会社の場合は、理論上は債務不履行(契約違反)を咎めることも可能でしょうが、これも現実的ではありません。

 したがって、質問の場合、融資対象不動産の所有権の帰属については住宅ローンの融資機関としても口を挟むわけにはいかないでしょう。

2.ローン債務について主張できること

Bさん一人が住宅ローンの債務者となることについても、融資機関として応じなければならないのですか?

ローンの債務関係については、融資機関がA・Bさんの取り決めに拘束されることはありません。

 まず、「住宅ローンも自分一人で返済することになった」ということは、法的には「Aさんの債務をBさんが免責的に債務引受した」ことを意味するのでしょうが、債務引受契約は基本的に債権者(融資機関)・旧債務者(Aさん)・引受人(Bさん)の3者が当事者となる契約であり、債権者たる融資機関との合意なしには成立しません。

 また、債務者(Aさん)と引受人(Bさん)との合意だけで成立する「履行の引受」という概念もありますが、「履行の引受」の場合は、債権者との関係で債務者(Aさん)が債務を免れるわけではありません。単に「Aさんが支払うべき返済金をBさんが(第三者弁済として)支払う」という、AさんとBさんとの間の約束事に過ぎませんから、基本的に債権者には関わり合いのない話です。

 したがって、いずれにせよ、債権者たるローンの融資機関がA・Bさん間の取り決めに拘束されることはありません。ローンの債務者を誰にするかは、債権保全面等から債権者が主体的に判断すべきことですから、質問の場合も、Bさんの返済能力等を勘案し、Bさんの申し入れに応じるか否か(債務引受の可否)を慎重に検討すべきでしょう。

3.法的な手続

Bさんの申し入れに応じるとすれば、どのような手続が必要ですか?

融資対象不動産のAさんの持分(所有権)をBさんに移転する手続と、Bさんによる債務引受の手続が必要になります。

 A・Bさんの合意内容を法律関係に反映させるには、まず、住宅と敷地のAさんの持分(所有権)をBさんに移転する必要があります。この所有権の移転については、A・Bさんの合意内容にもよりますが、離婚に伴う「財産分与」、又は債務引受を代償とした「負担付贈与」による持分移転ということになるでしょう。

 次に、融資機関・Bさん・Aさんの間で、Bさんを引受人とするAさんの連帯債務についての免責的債務引受契約を締結することになりまが、この際は当然のことながら、保証人たるX保証会社の承諾が不可欠です。

 また、質問の場合は、X保証会社の求償権を被担保債権とする抵当権が設定されていますから、Aさんの負担しているX保証会社に対する求償債務についても、X保証会社・Bさん・Aさんを当事者として、Bさんを引受人とする免責的債務引受契約を締結すべきことになります。

4.必要な登記手続

どのような登記が必要になりますか?

@ Aさんの持分について「財産分与」又は「贈与」を原因とする移転登記
A 抵当権について、「Aの債務引受」を原因とする債務者の変更登記
が必要になります。

@まず、Aさんの持分をBさんに移転する登記をすることになりますが、その登記原因は、AさんとBさんの合意内容によって違ってきます。AさんとBさんが離婚に伴う財産分与として、不動産の持分(と債務)をBさんに譲渡する旨の合意をしているのであれば、登記原因は「財産分与」となりますし、Bさんによる債務引受を代償としてAさんが不動産の持分を譲渡するといういわゆる負担付贈与だとすれば、登記原因は「贈与」となります。

A次に現在Aさん・Bさんが連帯債務者となっているX保証会社の抵当権について、「Aの債務引受」を登記原因として、債務者をBさん一人(単独債務者)に変更する抵当権の変更登記をする必要があります。

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